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【空冷】PCを静音化するためのファンレイアウト例【エアフロー】

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自作PCにおいて冷却と静音性のバランスは「ケースによる」「パーツによる」と言われがちですが、基本的な構造や設定は共通のものが多いです。
ゲーミングPCの静音化設定について、テンプレート化を目指し記事を残していきます。

今回は静音性を重視したファンレイアウトを紹介し、実際のPCを見ながらそのレイアウトや調整について解説します。

各ファンの役割など、共通する部分を説明してから実例の解説をしています。実際のPCを先に見たい方はこの先にある「実例解説を見る↓」を押しページ下部へ移動してください。

(※簡易水冷のCPUクーラーを使用する場合は、今回紹介するPCとは話が違いますのでご注意ください。)

紹介するファンレイアウト

空冷クーラー(トップフロー・リテールクーラー)

  • ① CPU:i3 12100 / GPU:RTX3060 / ケース:DeepCool MACUBE 110

実例解説を見る↓

空冷クーラー(サイドフロー)

  • ② CPU:i5 12600K / GPU:RTX3060 / ケース:Antec P10 Flux

実例解説を見る↓

  • ③ CPU:i5 13600K / GPU:RTX4070 / ケース:Thermaltake S100 TG

実例解説を見る↓

続いて共通する部分を紹介します。

ケースファンの向き

前から冷えた空気を取り込み、温まった空気を後ろから吐き出す流れを作ります。

  • 給気:フロントファン・底面ファン
  • 排気:リアファン・天面ファン

リアファンを他より多く回転させる

だいたい自分から遠いファンだから

同じモデルのファンが同じ回転数で回っていても、自分から60cm離れたフロントファンと自分から80cm離れたリアファンでは、リアファンの方が静かに聞こえます(自分の場所で音圧レベル約2.5dB分)。

概算ではフロントファンの【400RPM・800RPM・1200RPM】がリアファンの【450RPM・900RPM・1350RPM】と同じくらいの聞こえ方になります。

パーツの冷却に寄与しやすいから

リアファンはCPUクーラーに近く、他のファンに比べて回した分だけパーツを冷やしやすいです。
同じ面にファンも少なくエアフローの一端を担いやすいため、多くのケースでパーツを冷やせず「空回り」することがないファンだと考えられます。

フロントファンは2個がおすすめ

2個で十分エアフローを作れることが多い

フロントファンは給気ファンとして、パーツへ風をバランスよく供給する役割で使用します。

マザーボード側を見ると、ATXマザーボードのサイズが305mm×244mmで、冷却すべきパーツも概ねその中に収まります。グラフィックボードを境に上段・下段の空間があることが多いでしょう。

フロントファンも上段・下段と2個(120mm×2・140mm×2)あれば、エアフローをコントロールするのに十分かと思います。
その2つのファンの回転数を変えることでパーツの発熱に応じた給気を行いましょう。

0個だとパーツに風が行きづらい

フロントファンなしだと、リアファンの周辺やケースの隙間から給気する流れが強くなります。
冷却に関係ないところからの給気も多く、CPUクーラー・グラフィックボードそれぞれのファンについて回転数が上がりやすいです。

隙間から給気されている分をフロントファンからの給気にするだけで、パーツの冷えやすさが大きく上がります。1個でもいいのでフロントファンを設置することをお勧めします。

1個だと高負荷時にはうるさくなる

CPU・GPUの発熱が大きい場合、ケースの給気・排気もファンで強制的に行う必要があります。
回転数を上げるのがいいのか?設置個数を増やすのがいいのか?ということについては、
静音化の視点からすると「設置台数を増やして回転数のバランスをとる」のがおすすめです。

ファンのみの騒音レベルを測ると、概ね

  • ファン1個を1150RPMで回す
  • ファン2個を1000RPMで回す
  • ファン3個を 925RPMで回す

の3パターンが同じくらいの音となります。

ケース全体の冷却性能は排気側にもよりますが、一旦フロントファンで扱える風量を増やしておいて2個のファンを個別にコントロールするようにすれば、使用パーツに応じた冷却が静かにできます。

フロントファンは自分に近く、騒音を抑えるメリットが大きい箇所です。
CPU・GPUの発熱が大きい場合は、ただ回転数を上げるより設置個数を増やすのがいいかと思います。

3個だとアイドル時がうるさい

では積めるだけ積めばいいのかというと、多くても害があります。

ファンを音源と見たとき、ファン1個に比べ、ファン2個は+3.01dB、ファン3個は+4.77dBと音が大きくなります。

ファンには最低回転数が決まっているため、あまり強制給気の必要がないアイドル時には、複数のファンが回りすぎてうるさいという事態が発生します。

ケースへの配置も「フロント面に3つのファンをみっちり詰める」一択になることが多く、個別に回転数を調整してエアフローをコントロールすることが難しくなります。

底面ファンはフロントファンが使えないときに

底面ファンの役目は主にケース下部からの給気・グラフィックボードへの送風です。
しかし最近のPCケースでは底面ファンの下に電源ユニットのケーブルが溜まることが多くなっています。

ここから給気しようとすると、風通しの悪いところに風の流れを作る必要があるため、ファンにはある程度の回転数が求められます。
結果として騒音の割にパーツを冷やさないファンになりがちで、設置の優先度は低いです。

例外として、底面ファンが直接外部から給気でき、フロントファンが特殊な位置にある・フロントファンが使えない場合、底面給気を加えた方が静かになることがあります。

※フロントファンが拡張ベイとHDDで埋まる場合、底面ファンを追加(2019年 GALLERIA XF)

天面ファンは0個か大きいファンを1個

天面を塞ぐことで静かにできる

冷却が間に合っていれば、天面を塞ぐことでPCから出る音を抑えることができます。
天面ファンを設置しない分、リアファンやCPUクーラーのファンを多く回して冷却することになります。

天面ファンはフロントファン・リアファン・CPUクーラーのファンから近く、設置すると干渉してエアフローを乱してしまいがちです。周囲に隙間も多く空回りしやすいファンでもあります。

他のファンの冷却性能に不安がないのであれば、天面ファンの設置より他の回転数をコントロールすることが優先です。

リテールクーラーと相性が良い

CPUクーラーのファンが天面のファンより小さい場合、特にリテールクーラーを使用している場合は、

  • ヒートシンク周辺からすぐ排気することができる
  • 小さいCPUクーラーのファンを回すより静かにしやすい

ので天面ファンを設置するとアイドル時の静音性を高めることができます。

その際はコピー用紙などでファンが設置されない天面の箇所を塞ぎましょう。

ファンが常に100%回転しているような状態だと天面ファンを設置した方が騒音が大きくなるかと思い、高負荷時の検証をしました。

結果、リテールクーラーは周囲のファンの音をかき消すほどうるさくなるため、天面ファン1つでは騒音値に差が見られませんでした。

一方、サイドフローのCPUクーラーでは、逆に天面ファンを1個つけたところで温度等の改善が少なく(ケースファンではなくCPUクーラー自体の性能が重要)、アイドル時・高負荷時ともに騒音を考えると天面ファンは0個でいいかと思われます。

やや負圧になるよう回転数を設定

今回紹介するレイアウトでファンを使用する場合は、給排気のバランスでいうと隙間からケースに少し風を吸い込む「やや負圧」位を目安に回転数を設定してください。

静音化の視点からは

  • リア側のファンを多く働かせやすい
  • ファンで強制的に風を通さなくても特定のパーツに熱がこもりにくい

という理由で「やや負圧」がおすすめです。

多少正圧でも特に問題があるわけではないので、アイドル時と高負荷時(ベンチマーク時)でやや負圧に設定したら、他のタイミングは気にしなくても構わないです。

ファンレイアウト実例解説

① CPU:i3 12100 / GPU:RTX3060 / ケース:DeepCool MACUBE 110

パーツ詳細

  • CPU:Intel core i3 12100F(低電圧化)
  • グラフィックボード:Palit NE63060T19K9-190AD (GeForce RTX 3060 Dual OC 12GB) LHR版(低電圧化)
  • マザーボード:ASRock H610M-HDV/M.2
  • ストレージ:EXCERIA PLUS G2 SSD-CK500N3PG2/N
  • メモリ:F4-3200C16D-16GIS [DDR4 PC4-25600 8GB 2枚組]
  • 電源:SMART 600W STANDARD PS-SPD-0600NPCWJP-W
  • PCケース:Deepcool MACUBE 110 R-MACUBE110-WHNGM1N-G-1 CS8060
  • CPUクーラー:Intel リテールクーラー 12100F付属
  • フロントファン(上段):KAZE FLEX PWM 300~1200rpm SU1225FD12M-RHP
  • フロントファン(下段):WONDER SNAIL 120 PWM 1800RPM WS1225FD18-P
  • リアファン:WONDER SNAIL 120 PWM 1800RPM WS1225FD18-P
  • 天面ファン:Deepcool MACUBE 110 に付属のファン(DC制御)

検証用にいろんなファンを寄せ集めています。CPUクーラー(リテールクーラー)のファンが大きな音・高い音を出すため、120mm以上のケースファンを搭載し負担を分散すると静かにしやすいです。

リアファンをCPUクーラーの真横・天面ファンを真上に取り付け、天面は周囲の隙間を塞いでいます。

個別の工夫や修正点

  • フロントには回転数の違うファンを2個束ねて取り付けています。

天面ファンを導入する際にマザーボードのファンコネクタが足りなくなったため、同じBIOS設定でファンの種類を変え回転数を調整しています。

これだと上下2つのファンで回転数に差がつきすぎる(うるさくなる)ため、同じファンを個別に回転数設定した方が静かにしやすいです。とはいえマザーボードは後から交換しづらいので、ここで小技として紹介します。

  • ケース付属のファンを天面ファンに再利用しています。

低予算で組む場合ケースファンを最初から沢山買う必要はないと思います。リアファンを1つ購入し、ケース付属のファンをフロント下段に再利用するところから静音化を始めましょう。

その後はケースファンをどんどん増設するよりサイドフローのCPUクーラーに換装した方が、静かなPCが組めます。より大きなヒートシンクを採用することで、ファンの回転数をそこまで上げずとも冷却性能の高いモデルが多くあります。

  • グラフィックボードのファンと給気を塞いでしまっています(要修正)。

ネットワークカードや追加SSDなどPCIeの拡張スロットを使用することがあります。ファンは前後の空間が狭くなると性能を発揮できなくなるため、マザーボードのマニュアルで性能を確認し、極力離れたスロットに追加のカードを挿すのが良いです。

更にいうとストレージ・Wi-fi・Bluetoothなどはグラフィックボード直下のスロットではなく、m.2やUSBで追加するのが望ましいです。

② CPU:i5 12600K / GPU:RTX3060 / ケース:Antec P10 Flux

パーツ詳細

  • CPU:Intel core i5 12600K(低電圧化)
  • グラフィックボード:Palit NE63060T19K9-190AD (GeForce RTX 3060 Dual OC 12GB) LHR版(低電圧化)
  • マザーボード:ASUS TUF GAMING B660M-PLUS D4
  • メモリ:Team DDR4 3200Mhz PC4-25600 8GBx2枚(16GBkit) Elite Plus
  • ストレージ:EXCERIA PLUS G2 SSD-CK500N3PG2/N
  • ストレージ2:HDD ST2000DM001 [2TB SATA600 7200]
  • 電源:玄人志向 80Plus GOLD 850W ATX KRPW-GA850W/90+
  • PCケース:Antec P10 Flux
  • CPUクーラー:DeepCool AK400 R-AK400-BKNNMN-G-1
  • フロントファン(上段):WONDER SNAIL 120 PWM 1800RPM WS1225FD18-P
  • フロントファン(下段):WONDER SNAIL 120 PWM 1800RPM WS1225FD18-P
  • リアファン:WONDER SNAIL 120 PWM 2400RPM WS1225FD24-P

私のメインPCです。Antec P10 Fluxという静音ケースを使用しており、エアフローとしては隙間からの給気が把握しやすいことが特徴です。ケース内はATX対応のサイズでゆとりがあります。グラフィックボードにも空気を送りやすく、12600KとRTX3060を組み合わせた程度では熱がこもる事態は起こっていません。

ファンのレイアウトはCPUクーラーの真横にリアファンと上段のフロントファンを、ボトムカバー(シュラウド)上に乗るような高さに下段のフロントファンを配置する形にしています。

フロントファンは3個搭載可能なのですが、そうすると最下部のファンがボトムカバー下にめり込み、あまり機能しません。そこにHDDを何個も積み上げるときに低回転数で使う程度でしょうか…

個別の工夫や修正点

  • グラフィックボードのリア面からの給気

リアファンで強めに排気するバランスだと、グラフィックボードのファンもリアの面から給気できます。

この給気は、

冷えた空気を取り込む→グラフィックボードを冷やす→リアファンから吐き出す

エアフローを作っており、グラフィックボードのリア側ファンを1つだけ回していれば、アイドル時のGPU温度が安定しやすいです。グラフィックボードのファンが回ったり止まったりでうるさい場合は「リア側ファンを1個だけ最低回転数で回す」設定にしてみてください。

  • フロントファンをケース内側に配置しています

フロントファンの設置位置をフロントカバー側ではなくPCケース内側に配置しています。単純に自分から遠くなる分静かになりやすいです。このケースの場合、側面の吸音材がアイドル時の音を和らげてくれる効果もあります。

グラフィックボードが2連ファンの場合、送風を考えてもスペースが余ることがありますので、一度試してみてください。フロントファンとフロントカバーがギリギリまで寄っているケースだと冷却も良くなる可能性があります。

  • リアファン付近の隙間には注意(要検討)

リアファンが近くの隙間から給気して、そのまま排気する風の流れがあります。
これはパーツを冷やさないエアフローになりがちで、リアファンの排気能力を無駄遣いし、余計な回転音を出す原因となりえます。

隙間を塞ぐとパーツの温度が下がる場合がある(静かになる場合がある)ので試しにテープなどで塞いでみてください。

③ CPU:i5 13600K / GPU:RTX4070 / ケース:Thermaltake S100 TG

パーツ詳細

  • CPU:Intel core i5 13600K(低電圧化・電力制限150W)
  • グラフィックボード:RTX4070 GV-N4070WF3OC-12GD [PCIExp 12GB](低電圧化)
  • マザーボード:ASUS TUF GAMING B660M-PLUS D4
  • メモリ:W4U3200CS-16G [DDR4 PC4-25600 16GB 2枚組]
  • ストレージ:WD_BLACK 1TB SN770
  • 電源:XPG PYLON 650W PYLON650B-BKCJP
  • PCケース:Thermaltake S100 TG Snow Edition
  • CPUクーラー:DeepCool AS500 PLUS R-AS500-BKNLMP-G
  • フロントファン(上段):ARCTIC P14 PWM PST BLACK ACFAN00125A
  • フロントファン(下段):ARCTIC P14 PWM PST BLACK ACFAN00125A
  • リアファン:WONDER TORNADO 120 PWM

4KのテレビでStarfieldをプレイするために製作したPCです。イヤホンを使用しない前提で組んだため各パーツ、特に静音性が高いものを採用しています。エアフローの特徴としては、天面からCPUクーラーが吸気していることと、3連ファンのグラフィックボードで上段と下段がはっきり分かれていることが挙げられます。

ファンのレイアウトはCPUクーラーの真横にリアファンを配置し、前面に140mmファンを2個取り付けています。前面のファンについては取り付けレールの都合で上下の位置が調整できませんでした。

個別の工夫や修正点

  • CPUを低電圧化し電力制限をかけています

使用したCPUクーラーは「DeepCool AS500 PLUS」というファン2個のモデルなのですが、CPUに電力制限をかけ発熱を抑えることでファン1個で運用しています。13600KはそのままだとAS500 PLUSでもかなりうるさくなる発熱のCPUです。全力CPUを全力クーラーで冷やし切る想定で、更に強い空冷や簡易水冷を選ぶと全体的に騒音は大きくなります。

特にゲームをする場合、CPUのシングルコア性能が落ちなければパフォーマンスに影響しないことも多いので、電力制限をかける想定でパーツを選んでもよいと思います。

電力制限をかけると制限を守るように消費電圧が低下し、性能が低下します。
そこで、BIOSからCPU Load-Line Calibrationなどで電圧に対するクロック数を向上させると、その性能低下を緩和できます(低電圧化)。

低電圧化はオーバークロック同様メーカー保証外の可能性があります。自己責任でご設定ください。

グラフィックボードの低電圧化はこちらの記事で解説しています。

  • フロントファンに140mmファン2個を採用しています

多くの場合120mmファンよりも140mmファンを採用した方が静かによく冷えます。140mmファン1個か120mmファン2個か迷った場合は発熱次第で決めると良いかと思います。

120mmファン2個で上段下段をコントロールするとある程度風量を入れても騒音が大きくなりません。
最低回転数に近いアイドル時はコントロールに限界があり140mmファン1個の方が静かになりますので、CPU・GPUともに発熱が少ない場合は140mmファン1個がおすすめです。

  • フロントファンは下段の回転数を上げています

同じ面で2つのファンを回す際、回転数に差が出るほど騒音値が大きくなりがちです。より大きな音を出すファンにトータルの音量が引っ張られるためで、完全に風通しが良い空間だと回転数を揃えた方が全体では静かにできます。

一方PCケースは上段が風通しが良く、下段が風通しが悪くなることが多く、給気のバランスを整えるためには若干ファンの回転数をずらすことが有効です。

上下で違うファンを使うと回転数の差が大きくなってしまうので、同じファンを用いて回転数を個別に調整するのがおすすめです。

(おすすめのバランス設定)

個別にファンがコントロールできる状態であれば、回転数を揃えた状態から設定画面の%を

  • アイドル時:上段は-1、下段は+1することで2ポイントの差をつける
  • 高負荷時:上段は-3、下段は+3することで6ポイントの差をつける

程度にずらしてバランスをとりましょう。

最後に

迷ったらまずリアファンを回す

今回はPC静音化のためのファンレイアウトを紹介しました。共通の物を紹介するつもりが似通ったPCケースで色々と検証し書き連ねてしまいました。

ご自分のケースで静音化を試す場合、まずリアファンを多めに回してみてください。

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